わしが教えたる!父と娘の中学受験

塾に行くと遊んでくるだけになるに違いない小学5年生(2019年受験)の長女とけ(愛称)に,何を思い立ったか受験指導を始めて没入している父と娘の記録

罵倒ル

 娘の語彙教育のことばかり考えていましたら,こんなん書いてました。

 

 

 一〇歳ほどの男児二人が睨み合っている。と,すごい剣幕で罵倒をし始めた。

 「おい,こら,ションベン臭い青二才。妙ちくりんなアホ面下げて生き恥さらすな,すっとこどっこい。蹴ったくそ悪いわ,薄らトンカチ。しばき倒すぞ」

 「調子こいて四の五のいうな,乳臭いがきんちょが。どの面下げて生意気いうてんねん。われのちんちくりんな間抜け面を鏡で見さらせ,虫酸が走るわ。どつき回すぞ」

 「やかましい,がたがた抜かすな,洟垂れ小僧が猪口才な。愚図でのろまのトンチキチン。嘘つきいんちき人でなし。業突張りの札付きペテン師成り上がり。太々しいぞこの腐れ外道のならず者,鼻持ちならん厄介者。犬のエサにもならんわ,役立たず。つべこべゆうとったらはっ倒すぞ」

 「いけしゃあしゃあとええ加減な戯言抜かすな素寒貧。ちゃんちゃらおかしいわ,ボケカス茄子。ひょうたん。むっつりスケベのロリコン。ゲジマユのチビデブハゲのぼんくら木っ端役人。税金泥棒の穀潰し」

 「図に乗るなブタ野郎。とろくさいウドの大木。ちゃらんぽらんのとんちきちん。臆病者卑怯者。区立小の面汚し,鼻摘み者」

 「洒落臭いわ,無礼者。アホバカ変態ノータリン。ウンコ垂れ」

 「このくそガキ。だだっこのマザコン。泣き虫弱虫寝ションベン垂れ。お前の母ちゃん出べそ。ヤブ医者も匙投げるわ」

 「おお,おお,ひょうたんみたいな気色悪い口がよう動くわ。頭悪いはかっこ悪いは音痴やわで,彼女おらんで振られ続けて笑止千万。万年〇点の粘着ストーカー」

 「たわごと言抜かすな。腑抜け腰抜けあかんたれ。くたばりさらせ」

 「小賢しいわ,このゲジゲジ便所虫」

 男児らの罵倒は続く。

 「とんまなお上り。すってんてんの田舎モン。おかっぱのちょんまげ。キュウリのぬか漬けでも作っとれや,へそ曲がりのうつけ者。あかんべえ」

 「おっちょこちょいの頓珍漢。脇毛もっさもさのはげちゃびん」

 「ペーペーの若造」

 「おっさん」

 「おい,おっちゃんらを前にしてようゆうなあ。おっさんは悪口やあらへんぞ」

 男児らを取り囲んで百人ほどの五,六〇代のおっさんが紙片を握りしめた拳を振り上げている。その一人が大声を張り上げて,周りからどっと笑いが起こる。

 「たわけ者。ごろつきの飲んだくれ,ゲロゲロげろまみれ」

 「シャブ中ポン中,ダンゴムシ」

 おっさんの一人が苦笑いをして俯く。

 「変人」「奇人」「ぶきっちょ」「下手くそ」「唐変木」「大根若者」「ウンコ」「アホ」「バカ」「ウンコ」「ウンコ」「ウンコ」男児らの顔は徐々に混乱と焦燥で紅潮していく。

 「おいおまえら,ウンコウンコばっかりゆうてどうすんねん。もう時間あれへんど」。おっさんらの目は充血し,泡を吹かんばかりに口々に怒号を発している。

 「ぶきっちょの左巻き」「ウンコ」「ウンコ」「ウンコ垂れ」

 「ウンコおにぎり」

 「よっしゃ,でかいぞ。万罵取ったど」。おっさんの一人が破顔して一際大きな声を上げた。握りしめた紙片には,「公営罵倒ル ジュニア初出場3R 『コッペパン:500円』『コオロギ:300円』『おにぎり:200円』」と印字されている。

 男児らから見えない角度に設置された3台の電光掲示板には,数十の言葉と数字が表示されている。「おにぎり」の横の「102.2」という数字が点滅を始めた。

 しかしそのおっさんの笑顔はすぐに消えた。電光掲示板に青色で審議中と表示されたのだ。「ただ今の罵倒言葉は,「おにぎり」か「ウンコおにぎり」かが審議の対象となっております。お手持ちの罵倒言葉投票券はお捨てになりませんよう・・・」

 アナウンスが終わらないうちにおっさんは審判席に向かって怒鳴りだす。「なんやと,イカサマ師。盗っ人猛々しいわ,この銭泥棒。おにぎりゆうとったやろが。寝言は寝てからゆわんかい。お前の耳くそけつの穴に捻り込んでいわしたろか。早よ審議消さんかい。いつまでうじうじ考えとるんじゃ,金玉付いとんのか,え,ポークビッツ。お前のちまいドリチン見たら羊でも笑い死ぬど。羊が捩れ死んでもえええんか,この・・・」。おっさんの罵倒は延々と続く。

 男児二人は,そのおっさんを目映げに見て,一言も聞き漏らすまいと直立している。