わしが教えたる!父と娘の中学受験

塾に行くと遊んでくるだけになるに違いない小学5年生の長女とけ(愛称)に,何を思い立ったか受験指導を始めて没入している父と娘の記録(たまに別の話題も,そりゃぁ・・)

没個性的なわたくし

 

 

今週のお題「自己紹介」

 

 娘が所用でお勉強を出来ないため,今週のお題というものの助けを借りて虚実取り混ぜて自己紹介を致します。

 

 わたくしは,個性的でありたかった。いや,個性的であると呼ばれたかった。

 何が個性的であるということなのかを正しくは理解できていなかったが,それが個性的であるということであると思い,思春期には,事理の性質・本質とするところなどを聞き回り,論じあったりして遊ぶいわゆる何々病に罹患した風を装ったりもした。何々病は通常幼児期から青年期に近づくほど重篤の度を増し,青年期には抽象的事象をその対象として弄ぶようになって精神的奇態の頂点を極めるものらしいが,わたくしも進んでそうであることをアピールした。自由っていったい何だ。愛っていったい何だ。

 しかし,わたくしは個性的にはなれなかった。

 いや,それ自体はどうでも良い。わたくしをひどく落胆させたのは,誰もわたくしを個性的であるとは言ってくれなかったことだ。

 わたくしは,個性的である,ということに反感をすら持つようになっていった。

 個性的であることはあたかも何か良いことであるかのように言われている風潮があるように思っていたけれども,本当のところは他人や社会にとって好ましい性質が良いとされるという当然のことが言われているに過ぎないのであって,個性的であるということは,平均的でないという意味の無色の価値に過ぎないのではないか。

 個性的であることイコール平均的でないことが褒めそやされていると誤解して,小滝橋のバス停で「東西線が参りまーす」と言うやつはいないだろうしめしめ,と思ってそれを実行したり,東西線のホームで駅員でもないのにそれをいうやつはいないだろうしめしめ,と思って「東西線中野行きが参りまーす。とか言ったりしてみたけど,ここはバス停じゃないからそれはいいいんだけど,実はぼくちんは駅員さんではないんだよーん」とか言ったり,「しめしめと思ったけど言わないよーん」とか言うやつはいないだろうしめしめ,と思ってそれを言ったりしたとしよう。そんなことをするのはもはやわけがわからないから,いや,わけがわかったとしても,たちまち阿呆呼ばわりをされるだけだろう。

 阿呆であると人から言われるとき,それは人並みに阿呆であるという意味ではなく,平均的でなく阿呆であるという意味であるから,個性的なことではあるが,良いことではない。平均的でなく阿呆だということになると,もう,個性的であるとか没個性的であるとかの話にもならない。あいつは阿呆である,で終りである。

 わたくしはようやく正しい結論に到達した。個性的であると評価されることは良いことではない。むしろ,平均的である,ということこそが良いことなのだ。

 わたくしは教職課程に進み,教職に就いた。公立小学校の高学年児童を担任する,平均的な教員である。

 わたくしは,信念に従って,平均的であること,平均的なものに重きを置いた。毎朝の朝礼では,日直の児童にその日の予想平均気温を述べさせたし,正月には保護者に向けて高学年児童へのお年玉の全国平均額が三八七二円であることを教示して同額を支払うよう勧めた。給食は,平均的な量を(給食費を余計に支払ったとしても何ら変わるところではない),平均的な時間をかけて,平均的な方法で摂るよう指導した。冷凍ミカンが出れば,その平均直径は六三ミリメートル,平均重量は九七グラムであることを教えてやった。食事は平均的な会話をしながら摂られるべきものであるから,教員であるわたくしは,児童らが平均的な会話を行うことができるよう,平均身長や平均生涯所得や加重平均株価などを平均的な声量で発するなどの配意もした。

 鼻から牛乳を出すといった平均的な悪戯は,平均的ではあるがたしなめてよい。「平均的な悪戯じゃんか」と口ごたえする児童があっても,動揺することはない。

 「鼻から牛乳を出すことは平均的な悪戯であるけれども,それを先生にたしなめられた子供が平均的がどうのこうのと口ごたえするというのは平均的でないでしょう」と諭せば良いのである。

 わたくしは,極めて平均的な教員であった。児童たちからあだ名を付けられるようにもなった。児童たちのうわさ話に登場することもある。平均的な事象であって,実に好ましい限りである。

 「個性先生が歩いてる!絶対あれ平均的歩行速度だぜ!個性先生って,ホント変わってるよね」

 わたくしは,教員としての平均的な幸せに包まれている。        

 

 

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