わしが教えたる!父と娘の中学受験

塾に行くと遊んでくるだけになるに違いない小学5年生(2019年受験)の長女とけ(愛称)に,何を思い立ったか受験指導を始めて没入している父と娘の記録

さよなら,とけちん

 とけちん,
 やっぱり,わしとだけでお勉強するのは無理があるゎ。
 お前は泣くけれど,わしは,結論した。
 今更やけど,
 塾に行き。

 時間を無駄にする態度が当たり前になってる。
 それはお前をダメにしてるだけや。
 そんな風になってしまうのが,やっぱり自宅学習だけでやっていくことの限界やな。
 4年生で塾に行っていて,てんでダメやったからわしが引き受けたけど,マンネリ化してしもたな。
 新しい刺激が必要や。
 でもな,わしとのお勉強は無駄にはなってなかったみたいやで。
 この時期には新たな入塾は基本的にできないようだけど,お前は今からでもBクラスには入れるみたいや。
 お前も頑張ったもんな。
 塾に行き。

 最後にまとめてアドバイスしとく。
 国語。
 わしは国語,得意やったぞ。
 しかもわしな,わしが書いた文章が入試の題材にもなってんで。
 中学入試じゃなくて大学の入試問題やったけどな。
 そんなわしが言うんやから,間違いない。
 文章はな,書いた人が何かを言いたいから書くわけや。
 何を言いたいのか,ちゃんと考えてみ。
 何かを言うためには,説得力が必要やろ。
 そのためにどういう問題提起の方法をして,どういう理論構成で,どういう具体例を挙げているのか,書いた人の気持ちになって読んでみ。
 そして,心の中で,素早く要約できるようにし。
 物語文かって,同じや。ある出来事とそこでの主人公の行動や心情の変化は,何かを伝えるために書かれてるんやで。
 漢字と言葉はな,文章を正しく読むために欠かすことのできひん前提や。ここをきっちり反復し。
 そうしたら,文章はスムーズに誤りなく読める。
 そうなってきたら,たくさんの文章(問題文)を片っ端から読んでみ。
 丁寧に読むべきところと,そうでもないところがあることが分かってくるはずや。
 そうなってくると,読むスピードが全然変わってくるで。

 算数。
 手筋(解き方の工夫)は,いろんなパターンをきちんと自分のものにし。
 角度の問題やったら,円が出てきたら中心と結ぶとか,正多角形やったら二等辺三角形を見つけるとかな。
 流水算やったら,「上下川静」をまず書いてから分かっている数字を書き込んでいきながら考えるとかな。
 それを反復して,自分のものにしてしまい。
 基本的な手筋がぐらついているうちにいろんな問題をやっても,中途半端になるだけやで。
 手筋を自分のものにできたら,それから,いろんな問題を解いて磨きをかけていき。
 ミスは,単なるミスやと思ってたらあかんで。
 正解か誤りかゆうたら,誤りでしかないんや。
 小数点が違ったら,何も書いていないのと同じやねん。
 いつも集中力を切らしたらあかん。

 理科。
 覚えるもんは覚え。
 計算問題は,知識を前提とした簡単な算数の問題や。
 算数やから,手筋がある。
 中和,燃焼やったら「ぴったり方程式」を見つけ出してきちんと書き出しておくとかな。水酸化ナトリウム水溶液中の個体の量も併せて書いておく。そうしたら小問はばばっと解ける。
 理科の計算は,算数の問題として考えたら難しくない。
 でな,何のためにどういう実験をしているのかとか,グラフや表の意味を素早く正しく理解するには,国語力も必要やで。
 国語力があってはじめて,理科の計算問題は簡単な算数の問題になる。
 国語力を補うのはな,やっぱり,いろんな問題に触れる経験や。
 そんなに多くのパターンがあるわけやない。

 社会。
 覚えるしかない。
 時代順に並べ替えるという問題は多いやろ?
 年号覚えたらええねん。
 年号が少しくらい怪しくても,年号を覚えていく中で,歴史の流れが見えてくるから,年号に真剣に取り組むのは悪いことやない。
 覚えたら,自然に理解につながる。
 覚えるのは,キーワードばかりではなくて,逆に,事件名や人名から,どういう事件か,何をした人かを言えるようにし。
 記述式の問題は,本当の理解を試すいい機会やから,おろそかにしたらあかん。
 覚えるには,絶対に書くことを厭うてはいかんぞ。

 自慢しとく。
 とけちん,お前の勇気と自信にもなるとええと思ってな。
 わしはな,高校生の時,大学なんか行ってどうすんねん,みたいにひねくれててな,部活が終わった3年の夏休みには,引越しのアルバイトとかしててん。
 高校はアルバイト禁止やったし,当時は高校生雇ってくれるところは少なかったから,大阪まで行っててん。
 朝6時前に起きて行って,6000円。しかもバイト代の半分が交通費に消えたわ。あほみたいやな。
 高校での成績はな,下から数えて10人には入ってたんちゃうかな。みんな東大・京大に行くような学校やったからな。
 でな,9月になって,若者はやっぱ東京いっとかんとあかんでしょと思ってな,そのためには親がお金を出してもしゃあないなと思える大学に行くのが近道や。
 当時偏差値が70を超える文系の東京の大学(学部)はな,国立私立で4つくらいしかなかったんちゃうかな。
 9月から勉強したわけやけどな。
 国語なんか,漢字だけでできてる文章も出てくるねんで。
 英語だけで書かれてる文章も出てくるねん(英語という独立した科目やけどな)。
 数学なんか,何やら記号とか出てきよるわけ。数学ゆうねんから数字でやれよと思ったわ。
 社会なんか,世界地理やら世界史やら,もう,広い広い。理科も広い広い。
 でな,塾(予備校ゆうねんけどな)行こうとは思わへんくてな,自分で参考書買ってきて,バシバシやっていったわけや。
 ホンマ,バッシバシやったで。わしにできひんことがあるかいな,思てな。
 ほんで,半年も経てば,なんや,これやったらできるわぃ,みたいな感じになったで。
 数学なんかな,私立の文系で一番偏差値が高かった早稲田大学政治経済学部というところでな,満点やで(数学教授のおじいちゃんのお墨付きやから間違いないで)。
 数学で満点ちゅうのは,すごいことやろ。半年でやで。
 わし,ちょこっとフランスにおったからな,小学4年生の秋に帰ってきたときには,「山」っちゅう漢字も書けへんかってんで。
 それで中学受験したんやで。
 中学受験のための塾に入るときIQテストやってな,168っちゅう天才児みたいな数字を出してんけど,あれはあてにならんもんやからな,ま,わしの努力のみによるもんちゅうこっちゃ。

 だからな,とけちん。
 やろうと思たら,半年でだって,受験にでてくる問題解くぐらいのことなんかどうとでもなるもんや。
 お前かて,そうや。
 天才である(苦笑)わしの娘やで。
 しかもお前には,半年を大きく超える時間がある。

 なぁ,とけちん。
 せやけどお前はな,ちょっと気持ちが入ってへんのとちゃうかな。
 自覚を持つためにも,環境を変える必要があるゎ。
 お前はわしにしがみついて泣いたけどな,わしも泣きたいけどな。
 お前が身を乗り出して算数の問題に格闘してる妙な恰好,好きやったで。
 お前が何かを理解した時,「解説うまいじゃん」とか言いながら,満足気にしている顔,好きやったで。
 「電気のきもーちー」とか鼻歌うたいながら,調子よくお勉強に取り組んでる姿,好きやったで。
 ようけお勉強した後に,今回は模試受けるの何か楽しみとか言って,晴れやかに受験に向かう姿,かわいかったで。
 創作漢字のレパートリーには,笑わせられたで。
 楽しかったで。
 せやけど,わしとべったりのお勉強は,もう終わりにする。
 塾に行き。

 塾に行ったかて,当たり前やけど,お前はわしの子や。
 わしのかわいい生徒であることも変わりはない。
 分からんところがあったらいつでも教えたる。
 何をやったらいいか分からんかったら,何をするべきかも教えたる。
 でも,まずは自学の意識を身に付けるべきや。
 自分で考えて,自分でお勉強をするべきや。
 そのためにも,まずはとりあえず,わしを離れてみ。

 塾に行き。
 結論が遅くなってすまんな。許せ。
 塾(のまだ体験授業)に行かせるだけやのに,娘を嫁に出すような気分になって,感傷に浸りきってる。
 ママ友(わしはママじゃないから父母友?っちゅうんかな)にも笑われたわ。
 ホンマ,大袈裟やな。ま,今日は許せ。
 でもわしは,そんな気持ち。
 ぽっかり,心に空洞ができたような気持ち。 
 
 さよなら,とけちん。

 

 がんばれよ,とけちん。 

 


今まで温かく見守ってくださった皆様,ありがとうございました。
心から感謝いたします。